ラット脂質代謝に影響を及ぼす豆乳の有効濃度について

雑誌:日本食品科学工学会誌, 57(4), 175-179 (2010) 著者:原田智子, 田中麻貴, 都築公子, 菅原誠, 髙木尚紘, 福田滿

【要約】

大豆タンパク質は、血中総コレステロール濃度低下や肝臓脂質蓄積の抑制など、脂質代謝を改善することが明らかになりつつあります。そこで、本研究では、大豆タンパク質を豊富に含む豆乳に注目し、大豆タンパク質濃度が変わるように乾燥豆乳で基準飼料の一部を置換した飼料をラットに投与し、血中および肝臓脂質濃度等に及ぼす影響を調べるとともに、脂質代謝を改善するのに必要な豆乳の有効投与量を明らかにすることを目的としました。21.6%を乾燥豆乳で置換した飼料を投与したラットにおいて、血中総コレステロール濃度および血中の非HDL-コレステロール※1濃度が有意に低下しました。これらのことから、飼料中の大豆タンパク質10%に相当する21.6%乾燥豆乳含有飼料の投与は、ラットにおいて脂質代謝を改善し、その効果は大豆タンパク質の濃度に依存していることが示唆されました。

【方法】

実験動物:7週齢Sprague-Dawley系ラット(雄)

1週間予備飼育した後、引き続き基準飼料を投与したコントロール群(n=6)、基準飼料の10.8%を乾燥豆乳で置換した飼料を投与した10.8%豆乳群(総タンパク質20%のうち大豆タンパク質5%置換に相当する飼料を投与した群、n=5)および21.6%を置換した飼料を投与した21.6%豆乳群(大豆タンパク質10%置換に相当する飼料を投与した群、n=5)の3群に分け、5週間飼育しました。

【結果概要】

1.血中総コレステロール濃度および血中の非HDL-コレステロール濃度が21.6%豆乳群で有意に低下しました

血中総コレステロール濃度および血中非HDL-コレステロール濃度が、コントロール群と比較して21.6%豆乳群で有意に低下しました(図1, 2)。血中トリグリセリド(中性脂肪)濃度は、両試験群で有意差は認められませんでした。

図1 5週間後の血中総コレステロール濃度

図2 5週間後の血中の非HDL-コレステロール濃度

2.体脂肪量が投与豆乳の濃度依存的に低下傾向を示しました

内臓脂肪量、皮下脂肪量、脂肪含有率は、有意差は認められませんが、投与豆乳の濃度依存的に低下傾向を示しました(図3, 4)。

図3 5週間後の内臓脂肪重量

図4 5週間後の皮下脂肪重量

【結論】

21.6%を乾燥豆乳で置換した飼料を投与したラットにおいて、血中総コレステロール濃度上昇を抑制し、また、内臓脂肪蓄積を抑制する傾向を示しました。これらのことから、飼料中の大豆タンパク質10%に相当する21.6%乾燥豆乳含有飼料の投与は、ラットにおいて脂質代謝を改善し、その効果は大豆タンパク質の濃度に依存していることが示唆されました。

【解説】

※1 非HDL-コレステロール

非HDL-コレステロール濃度は、総コレステロール濃度からHDL-コレステロール濃度を引いた値であり、LDL-コレステロール、VLDL-コレステロール、IDL-コレステロールの合計として示されます。動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年版では、動脈硬化性疾患のリスクを判断する上で総コレステロール値ではなく、LDL-コレステロール値を管理目標の指標としています。ガイドライン改訂にあたり、はじめて非HDL-コレステロール値という指標について言及されました。抗動脈硬化作用を有するHDLの影響を除いたものであるため、LDL、IDL、VLDLをはじめ、レムナントやsmall dense LDL等の動脈硬化惹起性の高いリポ蛋白を総合的に判断できる指標として注目を浴びています。

発表論文一覧へもどる